かつて美術館で働いていた頃、
美術館が市民の皆さんにとって気軽に足を運んでもらえる場所にどうやったらなるのか、いつも考えていました。
欧米の美術館のように、赤ちゃんも高齢者も、障がいを持つ方も、それぞれがそれぞれの過ごし方ができる場所として。
そして子どもを産んで初めて、美術館が子連れで行きにくい場所(ほぼNo.1?)だということを思い知らされましたました。
最近は授乳室もあり、無料のベビーカーなども設置している美術館が増えていますが、残念ながらそのことを知っているファミリーはそう多くはありません。
今日の美術館デビューツアーでも、「子どもを産んでから足が遠のいていた」といわれる方がいらっしゃいました。
そんなママたちに、そして子どもたちに新たなワクワクする居場所としての美術館を紹介するためのツアーを、鹿児島市立美術館の協力を得て開催しました。
一番下は5か月から、上は5歳までの子ども9人と11人のママたちが参加してくれました。
まずは「美術鑑賞」について。
何か「たった一つの答え」を見つけようとするのではなく、自分自身の感じ方、見方、
作品との対話を大切にすることを提案しました。
続いて、美術作品との出会いが子どもにとって、子育て中のママにとってどういった作用があるのか、親子鑑賞をおススメする理由などの話も。
次は館内ツアーです。
その存在は知っていても、なかなか入る機会が少ないアートライブラリーの利用方法(絵本コーナーもあるんですよ)、そして授乳室も実際にのぞいてみました。
授乳室には椅子が4脚とおむつ替え台、ベビーベッドがありましたよ。
中から鍵もできますし、おむつ替えは男性も利用できます。
展示室に入る前に、学芸係長の松下さんからコレクションについてご説明いただきました。
美術館にとって、コレクションはその核となり、個性となるもの。人で言えば、「性格」ってところでしょうか。
鹿児島市立美術館は、西洋近代美術の優れたコレクションがあり(モネ、セザンヌ、マチス、ピカソ、ルオーなどなど!)、鹿児島ゆかりの作家の作品も大変充実しています。
それではいざ、展示室へ!
皆さんちょっぴり緊張していらっしゃるかもしれませんので、
まずは直観で好きな作品を選んでもらいました。
ママたちには色が鮮やかなマチスの「サーカス」 が一番人気、
子ども部屋に飾りたいという方も。
ちなみに松下学芸員はマリノ・マリーニの彫刻を玄関用に選ばれていました(笑)。
そのあと、実際に色や形に注目しながら、ママたちが子どものナビゲーターとなって
一緒に見ていく方法を実践して、今日のイベントはおしまいです。
今回、新たな試みとしてコレクション展の「年間パスポート」をみなさんにプレゼントしました。
パスがあれば気軽に美術館に寄れますし、何度でも親子で作品に向かい合ってもらい、そのうちお気に入りの「わたしの作品」を見つけてもらえたら嬉しいです。
なんとこの子たちは、もしかしたら美術鑑賞歴80年、90年になるかも!
本物に出会う体験をこれからも続けてもらいたいです。
アンケートの感想に、
「子どもへの声かけや楽しみ方の勉強になりました。それ以上に、自分が楽しめました。」
とありました。
これこそ、私たちが狙いとしているものです。
まず、子育て中のママに楽しんでもらいたい。
最後に。
美術館は生き物だと思っています。
子連れ利用が増えれば、それに対応するべく美術館側も変わっていくからです。
時代に即して変化し続ける美術館。
この子たちが大きくなった頃には、もっともっと誰もが自分なりの楽しみ方や過ごし方ができる美術館になっていることと思います。
そのためにも、子連れでどんどん美術館を利用しませんか?
美術館は待っていますよ。
追記
鹿児島市立美術館の方から、なんとミルク用のポットをご用意していただきました。
ありがとうございました!